『排打功』。中国武術に伝えられる鍛練法の一つで、腕や脚、時には頭などを 木や壁に打ちつけて、骨や皮を鍛えるものである。内功として行う事もある。こ の功法に習熟した者の一撃は、恐るべき破壊力を持つという。 −民間武術探検隊辞典(中国武術練功編)−より 第二次民間武術探検隊帰国の日、不測の事態が起きた。我々の乗るはずだった 便の席がなぜかキャンセルされていたのであった。 それは常松隊長の怒りの早口中国語連打攻撃をもってしても、どうする事もで きなかった。 「まぁ、しょうがないや」とあきらめの早い、お気楽な隊員達は、途方に暮れ る(^_^;真面目な一部の社会人隊員達を残して、民間小姐・・・ではなく、民間武術 探検のため、街へと繰り出して行った。(ちなみにぼくは街組。ここから先の話 しは某隊員から聞いた話だ。) 隊員の中には、塾講師、会社社長などもいて、年始早々(この時の探検は正月 休みを利用したものであった。)からの欠勤は、立場的に結構まずいものがあっ た。 そんなホテル組隊員の所へ、朗報が入る。航空会社からの連絡で、いま直ぐ空 港に来れば、席があるというのだ。全員分の席は確保できなかったが、幾つかは とれたという事であった。 そこで、急ぎの用がある隊員を優先して、急遽二台のタクシーで空港へと向か う事になった。 中国のタクシーの運ちゃんの走りは熱い。一般道でも百キロ位は平気でだす。 しかも、信号も結構いいかげんだ。しかし、こういう一刻を争うような時には、 頼もしいかもしれない。 先に出たタクシーに乗った隊員達は一足早く空港に着くと、二台目のタクシー に乗った隊員達を待った。が、なかなか来ない。出発の時間も迫り、「遅い、遅 いぞー」と焦っていると、フロントガラスが真っ白になったタクシーがやって来 た。その車は後発の隊員達が乗った車であった。 聞けば、猛スピードでとばしていた運ちゃんが、何かで急ブレーキをかけ、助 手席にシートベルトをしないで座っていた○○師兄が、フロントガラスに頭から 突っ込んだという事だ。 だが、恐るべき事に、車のフロントガラスは、ひびが入って真っ白になってし まったが、○○師兄の頭はなんともなっていなかったという・・・。 しかも、そんな思いをしてまで空港に行った○○師兄だが、結局、飛行機には 乗れなかったという悲しさ。 それ以来、その事件は「○○師兄怒りの排打功事件」として密かに語り継がれ ているという。 民間武術探検隊 隊員 わたる