*これは、1995年に書いたものです。
北外での宿舎になった留学生楼であるが、始めはなかなか快適であった。
同室は「しゃおばん」という中国っぽいあだ名で呼ばれる「しゃおばん」だ。「しゃおばん」は背が低いが「躰道(たいどう)」を高校の頃からやっていて、なかなかの腕前だ。が、武道をやっているにもかかわらず「なんぱ氏」で、この時もいろいろと秘かに活動していたようである。詳しくは知らないが・・。ある夜、お気に入りの「蚊帳付きベッド」で寝ていると「ぽとり」と胸の上に何かが落ちた気配を感じた。
よく注意していなければ、気づかない位の「ぽとり」だったが、そこは民間武術探検隊を志すボクだ。たまたま気が付いたのであった。
微かに動く気配もあり、「虫か〜」と思い確認のため電気をつけると、
それは「わたしは小さくてかわいい茶色のごきぶりよ」であった。「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
はっきり言って、ボクはどんなに小さくてかわいくても「ごきぶり」は嫌いである。
その夜はそいつをとりあえず退治して(容赦しないぜ)、いやいやながら「蚊帳付きベッド」に入ったが、熟睡はできなかった。翌日、ボクは「ごきぶり撲滅プロジェクト」をしゃおばんと共に発動したのであった。
しかし、出国前には「蚊」はたくさんいるとの情報はあったが(実際には皆無だったが)、「ごきぶり」君がいるとの情報は入手していなかったため、必殺「ごきぶりホイホイ」は装備してきていなかった。日本除虫菊株式会社の「蚊取線香」は缶で持ってきていたが、何の役にも立ちはしない。
そこである目的で使用するために日本から持参した「強力ガムテープ」で特製「ごきぶりホイホイ」もどきを作製し、部屋のあちこちにセットしたのであった。この成果はなかなかで、かなりの「ごきぶり」君をホイホイする事に成功したのであった。我々の部屋にはベッド、机の他にごみ箱もあり、その始末は自分達でしなければならなかった。各階の共同トイレの中にごみ捨て場があり、そこに捨てればいいとの事。
が、ずぼらな我々の部屋のごみ箱は満杯になるまで使われ、しばらくして「い〜加減もうだめっ」状態になるまで、詰め込まれた。
流石に「ごみ捨てに行かねば」、と思いぎゅうぎゅうにごみの詰まったごみ箱を持ってごみ捨て場に行き、ごみ箱を逆さにして、「ぽんぽん」と尻を叩いた。すると「小さいつぶつぶ」が「うじゃうじゃ」とこぼれた。
それは日頃我々を悩ますあの「ごきぶり」君達であった。それこそ「何百匹っ!!」という数の茶色い小さいのが蠢く(うごめくと読む。スゴイぞ>コンピュータ)さまは「これが夢なら早く覚めてっ!お願いっ!」という感じであった。それ以来我々の部屋のごみ箱は常にクリーンな状態に保たれるようになった事は言うまでもないだろう。ちなみに宿舎は留学生楼と招待楼というのが合い向かいにあり、女性が多く泊まる招待楼の方には「ごきぶり」君は出没しないとの事であった。
あと、後の話しであるが、この時の「ごきぶり」君を本人の意志ではないが、トランクに入れて、持ち帰ってしまった男が約一名いたという話しである。(ボクじゃないっすよー。念のため)我々の「ごきぶり撲滅プロジェクト」が効を奏し、数はかなり減ったが、最後までいなくなる事はなかった。結局ここを離れる頃には慣れてしまう事になったが。
PS.中国ってこんな所ばっかりじゃないっすよ〜(^-^; 数年後同じ所に泊まった後輩はいなかったって言ってたしー。
重要(?)語句解説
○しゃおばん 小板(xiao3ban・ シィャオバン)
しゃおばんは本名を「板倉」と言い、中国語だと(ban3cang1 バンツァン)となる。しかし、クラスにもう一人板倉という男がいたため、紛らわしいので区別をする事にした。一人は背がとても高く、もう一人は背が低かったので、大きい方は大板(da4ban・ ダァバン)小さい方は小板(xiao3ban・ シィァオバン) と呼ばれる事になった。中国では子供を呼ぶ時、親しみを込めて「小(xiao3 シィァオ)」を頭に付けて名前を呼ぶが、(例:王くんなら小王で王ちゃんくらいの意味。逆に年をとってる人には老(lao3 ラオ) をつける。老王とか。)結果としてこれと同じ表現になったので(意味はずいぶん違うが)中国っぽいあだなと表現した。
○ごみ箱
このごみ箱、竹か何かを編んで作った物で、ごきぶり君の格好の棲み家となっていたようである。
次章予告
拳法をするには拳法ズボンだ!
本場中国で、民間武術家御用達の素晴らしい拳法ズボンをゲットするのだ!
果たして、わたるプレ隊員は拳法ズボンをゲットできるのか?!
刮目して待て!次章「ボクの拳法ズボン」
(心臓の弱い方や、気持ち悪い事の嫌いな方も安心してお読みになれます。)2000.06/02 民間武術探検隊 わたる